家事調停に弁護士は必要か?

 家事調停といってもいろいろあります。私は2年間家事調停官として札幌家庭裁判所で調停委員とともに調停を行ってきました。数百件の調停に関わったと思いますが、夫婦関係の調停が圧倒的に多数と感じました。夫婦関係の調停と言っても離婚を求めるもの、逆に夫婦の円満なやりなおしを求めるもの、婚姻費用の支払いを求めるもの、養育費の増額または減額を求めるもの、子供との面会を求めるもの、親権者の変更を求めるものなど様々です。その中でどちらかの当事者に弁護士が代理人としてついている事件は3割程度、双方の当事者に代理人がついている事件が1割程度ではなかったでしょうか。夫婦関係の調停の6割から7割はどちらの当事者も弁護士の援助を受けずに、ご本人が手続を行っている事件だったように思います。

 

 調停を申し立てるには家庭裁判所に調停の申立書や住民票、戸籍謄本などを提出するのですが、申立書の書式は家庭裁判所に備え置かれていますし、家庭裁判所のホームページからダウンロードすることもできます。申立書の作成も家庭裁判所の書式に自分の住所や相手方の住所を記入して、あとは必要事項をチェックしていけば容易に作成が可能です。費用も印紙と郵便切手、戸籍や住民票の取り寄せも含め5,000円くらいです。

 

 このように申立書を作成して提出するだけであれば、弁護士に依頼する必要はほとんど無いと言って良いと思います。しかし、いざ調停をすすめていくと調停が紛糾してしまい、にっちもさっちも行かなくなってしまう例が多くありました。調停官としては、上手な代理人がついてくれればスムーズにまとまるのにと思いながら、調停を不成立にしたこともずいぶんあったように思います。なお、ごくわずかながら、代理人がついたことで、かえってまとまる話がまとまらなくなり、裁判になってしまった例もなくはありません。

 

 どうして当事者だけでは調停が紛糾してしまうのでしょうか、典型的なのは、多数の争点で双方の当事者が自分の主張を譲らず、全面対立するケースです。例えば妻は「養育費も慰謝料も多く欲しい。子供にはなるべく会って欲しくない。」と主張し、夫は「慰謝料なんてとんでもない。養育費も妻がいうような多額は支払えない。しかし子供にはできれば毎週会いたい。」などと主張します。調停委員会は公平な立場から双方の当事者を説得しようとするのですが、対立が全面的になってしまうと当事者も感情的になっていますので、冷静な判断がしづらくなり、妻も夫も「調停委員は、自分のことを判ってくれず、自分にばかり不利な条件を飲ませようとしている。」ように思ってしまうのです。こうなってしまうと、まとまる調停もまとめようがありません。

 

 調停がまとまらない場合、最終的には裁判や審判になりますが、裁判や審判になればこの程度の基準になるという目安があります。調停委員はその目安を基準に当事者を説得するわけです。調停委員としては「この件で裁判や審判になれば、養育費が10万円を超えることはあり得ないし、子供に毎週会えるような審判が出ることはあり得ない。」との考えを持ちながら、当事者を説得しているわけです。しかし、当事者から見るとその目安が必ずしも判らないので、感情的になってしまうと一歩も引けなくなってしまうのです。

 

 この点、弁護士がついていれば、弁護士は裁判や審判になった場合の解決の目安を知っていますので、裁判や審判では認められそうもない無理筋の主張を控え、逆にこちらに有利な解決を引き出しやすい争点に的を絞って調停をすすめていくので、必要最低限の譲歩で調停をまとめることができるわけです。

 

 当初、ご本人で調停を始めたものの調停が紛糾してしまった場合、打開策として弁護士に調停の進行を依頼することは有効な方法だと思います。弁護士の立場からすれば、途中から関与するより最初の段階から関与させていただく方が事件の見通しも立てやすいというのが本音ですが、途中からでも弁護士が入った方が問題を冷静に分析して、有利な仕切り直しができることも少なくないと思います。

 

 もう一つ、弁護士に依頼するメリットは、遠慮無く愚痴や泣き言が言えることだと思います。夫婦間のもめ事ですからなかなか人には相談しづらいものです。親や親友にだってなかなか打ち明けにくい事柄もあるのではないでしょうか。その点、弁護士には守秘義務がありますし、他人ですので、この事件限りと割り切ってしまえば、他の人には話しづらい事柄でも話ができるのではないでしょうか。

 

 逆に、弁護士に依頼するデメリットはなんと言っても費用がかかることでしょう。弁護士費用は、調停の場合着手金として20万円くらい、成功報酬として最低20万円ぐらいのことが多いでしょう。決して安くない金額ですが、弁護士の側からすると調停には結構時間もかかるので、事務所を維持していくためにはこの程度の費用をいただかないと採算がとれない訳です。

 

 ところで、当初自分で調停を申し立て、もうすぐ決着がつきそうな場合に、弁護士に依頼したいと思ったときはどうでしょうか。着手金として20万円支払ったのに、1回で調停が不成立になってしまった場合でも普通は着手金を返してもらうことはできません。 

 そこで当事務所は回数制(1回 3万円)を設けることにしました。1人で調停を始め、なかなか思うように調停が進まないと思われた方は、お気軽にご相談下さい。

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コメント: 1
  • #1

    勃起不全 (火曜日, 28 4月 2015 16:59)

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