法曹を目指す若者たち

 4月から、北海学園大学法科大学院(以下、「学園ロー」)の先生になった。主に刑事弁護や刑事訴訟法の実務を教えている。学園ローは、現在、東北以北唯一の私学であり、働きながら学ぶ若者のための夜間部を設けている唯一の法科大学院でもある。

 現在、法曹(裁判官、検察官、弁護士)の大増員で、弁護士をとりまく環境は、非常に厳しいものがある。弁護士になるよりも、裁判所書記官や家庭裁判所調査官、検察事務官の方が、福利厚生や年金のことまで考えれば、一生で稼げる収入は高いのではないかと考えられるほどである。

 そんな、厳しい環境の中、法曹を目指して学ぶ若い人たちが、学園ローにもいる。彼ら、彼女らの多くはおとなしく、優しい性格である。正直言って、受験向きの性格とは思えない。自分もそうだが、受験という競争に勝つためには、負けず嫌いで粘り強い性格が向いている。「アイツが合格したのに、自分が合格できない訳がない。」そんな強い思いがないと、なかなか勉強を続けていくことが難しいのである。

 そういう訳で、残念ながら、なかなか合格までたどりつけない学生も多い。しかし、はっきり言うが、司法試験は合格しなければ、全く意味がない。私は、裁判官や検察官の経験はないが、弁護士の仕事は間違いなくやりがいのある仕事である。刑事事件で無罪や起訴猶予を勝ち取ったときの喜び、民事事件で自分が見極めた方向性で事件が上手く解決したときの充実感、被疑者、被告人や依頼者からの感謝の言葉、笑顔。苦労も多いが、弁護士をしてて良かったと心底思えることが何度もあった。

 裁判所書記官や検察事務官も司法にたずさわる職業ではあるが、方針を決定するのは裁判官や検察官であり、法を解釈し適用して紛争を解決するという、司法の核心部分を担っているのは、やはり裁判官、検察官、弁護士である。そこに法曹を目指す意義があると思う。

 なので、是非とも学園ローの若者たちには、司法試験合格を勝ち取って欲しいと思う。彼ら、彼女らの優しさは、法曹になってからはとても大事で必要な資質だと思われる。超高齢化社会と言われる日本で、高齢者や社会的弱者に優しく寄り添える法曹が、これからはたくさん必要になってくると思われる。だから、私も学生たちの合格サポーターとして微力を尽くしたいと思う。学園ローの教授陣には、北大を退官して就任された方も多く、教授陣のクオリティでは決して北大に劣らないと思う。

 学園ローは、少人数教育と夜間部があって働きながら学ぶ若者を受け入れているのが「売り」である。私の授業も受講する学生は数名である。起案の添削も丹念にできるし、1人1人の学生の理解度やレベルに合わせた授業も可能である。この点は、他の法科大学院では、なかなかまねのできない部分であると思う。

 法曹を目指す若者で、他人と競争するのが苦手な人や大勢の中で個性を発揮するのが苦手な人、社会人経験を有し働きながら法曹を目指す人は、是非とも学園ローの門をたたいて欲しいと思う。

 いつの日か、学園ロー出身の若い弁護士と共同受任した裁判員裁判で無罪判決を勝ち取ってみたいものだ。