刑務所見学

 札幌刑務所の見学に行ってきた。弁護士なら刑務所には仕事でしょっちゅう行っているのだろうと思う方もいるかもしれないが、普通の弁護士が仕事で刑務所に行くことはあまりない。というのは、刑事事件における弁護士の仕事は、判決が出るところで終わりであり、判決が出たあとはせいぜい上訴するかどうか被告人に確認するくらいだからである。

 担当していた被告人がどうしているか刑務所に面会に行ったり、刑務所出所後の社会復帰の世話をすることなどは、弁護士の仕事の範囲外であった。

 そんなわけで、刑事弁護の関係で警察署や拘置所(刑務所と違い裁判手続中の被疑者・被告人が収監されている。)には頻繁に足を運ぶのだが、刑務所に足を運んだのは10年以上ぶりである。

 札幌刑務所は長い間改築中であったが、昨年9月に改築工事が完了したとのことで、まさにピカピカの建物であった。最初会議室で施設の概要や受刑者に対する指導・教育についての解説を受けた後、受刑者が生活する舎房や工場等を見学させていただいた。

 現在の受刑者は独居がほとんどだそうである。独居房にはなんと全室に薄型の液晶テレビが備え付けられており、部屋の広さは3畳プラス洗面等のスペースだとのことであった。私の自宅にはテレビが1台しかなく私にはチャンネル権がないので、テレビに関して言えば刑務所の方が良い。また、部屋の広さも私の学生時代のアパート(4畳半、風呂なし、クーラーなし、トイレ共同)と大差ないし、安めのビジネスホテル程度の広さはあるので、それなりに快適に暮らせそうであった。

 工場は、木工工場と縫製工場を見学させていただいたが、受刑者の皆さんは私語もなく(あたりまえか)黙々と作業に励んでおられた。

 独居房はそれなりに快適そうとはいえ、監視のため外部から丸見えであるし、テレビがあるとはいっても当然決まった時間にしか視聴できないであろう。工場も休憩が自由にできるわけではない。また、説明によると生活保護の水準を超えないように食事代金等も考慮されているとの話であった。

 私も積極的に刑務所で暮らしたいとは思わないが、刑務所で生活したいために万引きや無銭飲食などの軽微な犯罪を繰り返す人がいるのも十分納得できた。生活保護水準に配慮しているとはいっても、現実には支給された生活保護費をギャンブルや借金の返済に充ててしまい生活保護水準どころか刑務所水準以下の暮らしを余儀なくされている人が多くいる。人間としてのある種のプライドのようなものをきっぱりと捨て去ってしまえば、刑務所で一生暮らし続けることも可能なように思われた。

 今回刑務所見学に行ったのは、福祉の仕事をしている方々との勉強会の一環であった。私は現在、弁護士会で高齢者・障害者の刑事弁護に関する委員会に所属しており、罪を犯した高齢者・障害者が社会復帰後、再び罪を犯さずに平穏に市民生活が送れるよう刑事弁護人と福祉職の方々が連携してサポートする取り組みに関わっている。現在は執行猶予や起訴猶予の方のサポートが中心だが、いずれ刑務所で服役して社会復帰する際のサポートにも広がりを見せるかも知れない。そうなれば、今までと違って仕事で刑務所を頻繁に訪れることにもなるであろう。